「保育士として」と「親として」
子どもと関わること。それは保育士としても、親としても、わたしがずっと大切にしてきたこと。
でも実際に“母”になってみて、感じたのは――「全然ちがう」ということでした。
保育士としての経験があるから、子育てもきっとスムーズにいくはず。
少しだけ、そう思っていたんです。
でも、実際は想像以上にしんどい毎日が待っていました。
責任の重さ、孤独感――親として向き合うということ
なにより違ったのは「責任の重さ」。
そして、助けを求められない“ひとりの現場”であるということ。
保育士として働くときは、たとえ1人で何人もの子どもを見ていても、必ず同僚や上司がいてくれました。
たとえば、プール遊びの準備。
私が書き出した内容を見て、
「この子には難しいかも」と気づいてくれる同僚。
「こういう案はどう?」と提案してくれる上司。
いろんな意見があるからこそ、自信を持ってスタートできるし、連携プレーでうまくいくことがたくさんあったんです。
誰かが「がんばってるね」と言ってくれたり、
別の先生が「〇〇先生がほめてたよ」って伝えてくれたり。
そういうやりとりの中で、子どもたちも自然と気持ちが動いて、できるようになることも増えていきました。
お友達に刺激されて「やってみよう」と思えること。
先生が変わるだけで、ふっと気分が変わって前向きになれること。
それも、集団の中だからこそ生まれる力です。
親としてのしんどさに、気づけたこと
けれど家では、毎日1対1の真剣勝負。
親であるわたしが“たったひとりの担任”です。
何かあっても相談する同僚はいない。
他の先生と交代もできない。
頼れるのは、自分自身だけ。
お昼ごはんを作りながらぐずる子ども。
家事が進まない焦りにイライラして、つい強い口調になってしまうことも。
夫とケンカした時には逃げ場がなくて、
「笑顔でいなきゃ」と無理にがんばってしまったこともありました。
そして、自分が体調を崩したとき。
本当は横になりたいのに、
「わたしが見なきゃ」って無理して動いて、
結局、どっと疲れてしまう――そんな日も。
両方の立場を知っているからこそ
でも、そんなふうに感じたからこそ、
保護者の方たちの気持ちが、以前よりずっとわかるようになった気がします。
保育士としての視点と、親としての気持ち。
両方を知っているわたしだからこそ、
これからできることがあるのかもしれない――
そんなふうに、今は少しずつ思えるようになってきました。
ひとりでがんばっているすべてのお母さん、お父さんへ。
たまには自分に「がんばってるね」と言ってあげてほしい。
そして、わたし自身も、そう言えるようにありたいなと思っています。